【重要提言】おせち料理とは何か?「正月料理」との違いは?【日本正月協会の公式見解】

「おせち料理って何?」

この活動開始以来、皆様からよくいただくご質問です。

本見解は、皆様からの疑問にお応えすべく、日本各地に残る民俗資料や歴史資料を踏まえた上で、日本正月協会として「おせち料理とはどういったものであるか?」の見解をまとめたものです。地域によって異なる風習や解釈があることを前提としつつも、全国各地に見られる共通性をまとめ、日本正月協会として一定の解釈を提示することを目的としています。

なお、本見解は、現時点で収集・整理できた民俗資料・歴史資料に基づく日本正月協会の見解です。今後、新たな史料や研究成果が得られた場合には、必要に応じて内容を見直します。

執筆者:日本正月協会 代表 今成優太

おせち料理

おせち料理に対する見解を理解するポイント

おせち料理の話に入る前に、日本正月協会は、2026年、これまでの研究成果を基に、当協会の基本理念行動指針をまとめました。

2026年現在、おせち料理をはじめ正月の文化に対し、一般論として「年神や祖霊への信仰心」をその理解の糧としようという向きが見られます。当協会はこれに対し、「日本人はなぜ年神や祖霊といった心のよりどころを求めるに至ったか?」といったレベルまで掘り下げて状況観察をおこないました。その結果、「他の季節と比較した冬という季節の特別性」を発掘するとともに、「自然への畏敬の念の成り立ち」を感得するに至りました。

ここから省みた「おせち料理の本質」を、本記事では明らかにしています。

当協会の基本理念や行動指針は下記記事をご参照ください。

【重要提言】おせち料理とは何か?

Q
おせち料理とは何か?
A

「おせち」とは、「節の日(節句)の供物」であるところの「節供(せちく)」を丁寧に言い表したもので、年始に食されるものが代表的です。当協会としては、この料理は「節の日の神人供食を目的とした料理の総称」であると考えており、必ずしもその品目に全国的な共通見解は定まっていないものと考えています。

Q
神人供食とは何か?
A

神人供食(しんじんきょうしょく)とは、神や祖霊に供えたものを人も共にいただくという、日本の祭祀に広く見られる考え方です。

【重要提言】「おせち料理」と「正月料理」は区別が必要

Q
おせち料理と正月料理は異なるものか?
A

当協会では、両者を区別して考えています。
おせち料理は、神人供食を目的としたものであり、神や祖霊と共に食すことを目的としているものの総称との見解です。
一方、正月料理は、おせち料理を含めた、正月のごちそう類全般を指すものであり、その全てが神人供食を目的としたものとは限らないため、これらは異なるものと考えています。
よって、おせち料理は、正月料理の一つではありますが、正月料理全体を指す言葉ではないものと解釈しています。

Q
おせち料理は全国共通で広まっていますか?
A

おせち料理は全国一律に広まっているものではなく、地域によって受け入れ方には大きな違いがあります。東北以北には、いわゆる「おせち料理」よりも「年取りの膳」を重視する地域も見られます。当協会では、東北地方などに残る「年取りの膳」は、現在広く知られるおせち料理が全国的に普及する以前から続く正月料理文化の系譜を伝えているものと考えています。

また、沖縄県には琉球王国時代から受け継がれてきた独自の食文化や年中行事があり、本土とは異なる正月料理の伝統が現在も見られます。

Q
東北以北にある「年取りの膳」と「正月料理」は同じものか?
A

当協会では、両者を区別して考えています。
なぜならば、全ての正月料理が膳として食されているわけではないからです。ただ、本件に関して十分なエビデンスが用意できていないため、明言は差し控えます。

【重要提言】肉料理はおせち料理に含まれるか?

Q
肉料理はおせち料理に含まれるか?
A

おせち料理は神人供食を目的としているところから、獣肉を用いた料理がおせち料理に含まれるかについては慎重に考える必要があります。
いずれにせよ、おせち料理やお雑煮を含めた正月のお祝い料理たる「正月料理」に獣肉の料理は含まれるものと解釈しています。

Q
魚料理は、おせち料理に含まれるか?
A

含まれます。魚介類は古くから節供や正月の供物として各地で用いられてきたため、おせち料理に含まれると考えています。

Q
鶏肉の料理は、おせち料理に含まれるか?
A

江戸時代には魚介類のほか、渡り鳥の肉が節の日の供物として食されていた歴史が見られます。しかし、鶏肉については地域差や時代差が大きく、全国的な統一見解をするに足りるだけの資料が十分ではないため、現時点では明言を避けます。

Q
肉料理がおせち料理ではないとすると、おせち業界からの反発が予想されるが、どう考えるか?
A

「おせち料理」ではなく、「正月料理」として販売するよう販売戦略を見直すことを薦めます。また、この見解によって業界が縮小することにはつながらないと考えます。

おせち料理の俗信・俗説への見解

Q
おせち料理は、正月中に女性が休むために料理を年末にまとめて作るためのものと言われているが、これは正しいか?
A

全国的に一律に正しいものとは考えていません。一部の地域での風習が広まったものであるとの専門家の意見もあり、当協会はそれを支持しています。

Q
おせち料理には言葉遊びや縁起を担いだ料理が多数見られますが、これは由来とどのように関わっているのでしょうか?
A

当協会では、おせち料理の本質は言葉遊びや語呂合わせ、縁起担ぎそのものにあるとは考えておらず、この点については慎重な立場をとっています。

例えば、「昆布は『よろこぶ』に通じるため縁起が良い」といった説明が広く知られています。しかし、昆布は古くから現在と同じ名称で呼ばれていたわけではなく、こうした語呂合わせが、いつ頃からどの程度広く認識されるようになったのかを明確に示す史料は、現時点では十分とは言えません。

このため当協会では、言葉遊びや縁起担ぎは、おせち料理そのものの本質や起源を説明する根拠としては慎重に取り扱うべきであると考えています。

Q
重箱に入ったものがおせち料理であるというイメージについてどのように考えるか?
A

現代では「重箱に入った料理」というイメージが広く定着しています。しかし当協会では、重箱そのものはおせち料理を定義する本質的な要件ではないと考えています。言い換えますと、重箱に入っていなくても、神人供食を目的とし、節の日の供物として扱われているものは「おせち料理」です。

おせち料理と五節句との関係

Q
「夏のおせち」といった商品名についてどう考えるか?
A

江戸時代には五節句(1月7日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日の年中行事)が幕府の公式行事として定着していました。今でも関西地方では尊重している様子が見受けられます。

五節句のタイミングに向けて売り出されたものであるなら「おせち」と呼んで差し支えないものと考えていますが、これらの五節句との関係が明確でない場合は、歴史的な意味での「おせち」ではなく、「重詰め料理」や「お重(おじゅう)」といった名称がより相応しいものと考えます。

Q
五節句以外にも色々なタイミングでの節句が大昔に中国から流入してきたが、これについてどう考えるか?
A

五節句として遺った節句文化は、中国から伝来するよりも前にあった日本の古代の文化と中国文化が合着したものと考えています。言い換えると、節句という態様は中国の文化に影響されているものの、これらには中国由来とは別の日本古来の文化をルーツとしているものと考えています。

本見解は、今後の学術的議論を喚起することも目的の一つとしています。異なる見解や新たな史料の提示を歓迎し、より妥当な理解へと発展させていきたいと考えています。

本記事では回答しないおせち料理への質問事項

  • おせち料理を買って食べることは文化のあり方としてふさわしいか?みんなで作って食べてこその伝統文化ではないのか?
  • ペット用のおせち料理についてどう思うか?
  • 添加物まみれのおせち料理を年始に食べるのがいいことなのか?
  • おせちを購入したお客様に祝箸を添えることにしているが、何膳つけるのが適切か?

まとめ

お正月の専門家たる日本正月協会として、おせち料理についての公式見解を示すことは、それなりに「覚悟」と「確度」の必要なことでした。そのため、長い間見解を示すことを避けていました。2018年の活動開始以来、当協会はもう間もなく活動10周年を迎えようとしています(執筆時:2026年7月)。これを契機に、当協会の基本理念や行動指針をまとめましたので、今後何を最も尊重して発信していくべきか、筋道の通ったお話ができるようになりました。そこで、今まで研究してきた内容について、一定の見解を示すことが、節目の迎え方としてふさわしいと考えました。皆様の善き理解の一助となれば幸いです。

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参考資料

更新履歴
  • 2026/07/31 加筆
  • 2026/07/26 初稿公開