お正月、それは一体どういうものでしょうか?
日本正月協会代表今成優太は、2018年の活動開始以来、長年お正月についてひたむきに研究してきました。本記事では、日本各地に残る民俗資料や歴史資料を踏まえた上で、日本正月協会代表者の個人の見解として、お正月に対する研究成果をまとめた、2026年版の資料です。
なお、本資料は、これまでの研究で収集・整理できた民俗資料・歴史資料に基づく日本正月協会代表個人の見解です。今後、皆様からお寄せいただいたご意見や皆様との議論を参考とし、また、新たな史料や研究成果が得られた場合には、必要に応じて内容を見直します。

お正月の研究成果2026年版を理解するポイント
お正月の話に入る前に、日本正月協会は、2026年、これまでの研究成果を基に、当協会の基本理念と行動指針をまとめました。
2026年現在、正月の文化に対し、一般論として「年神や祖霊への信仰心」をその理解の糧としようという向きが見られます。当協会はこれに対し、「日本人はなぜ年神や祖霊といった心のよりどころを求めるに至ったか?」といったレベルまで掘り下げて状況観察をおこないました。その結果、「他の季節と比較した冬という季節の特別性」を発掘するとともに、「自然への畏敬の念の成り立ち」を感得するに至りました。
ここから省みた「お正月の本質」を、本記事では明らかにしています。
当協会の基本理念や行動指針は下記記事をご参照ください。


正月とはそもそも何か?【お正月の定義】
正月という言葉の由来
正月という言葉の由来について、江戸時代生活文化事典(上)によると、次のように書かれています。
正月【しょうがつ】〈名目由来〉〔年中重宝記・一〕に次がある。一年十二ヶ月の初月を一月と言わず正月と言うのは、一年中の始めの月なので 「王者正に居る」の意をとり、唐虞の代より起る。(中略)正月と名付るのは秦の始皇帝は寅月の誕生で、この月をもって専ら政道を行うので「政月」といい、政の旁の「文」はかざりゆえ正に改めた(『埃嚢抄』)。
江戸時代生活文化事典(上)【AD】
つまり、正月という言葉はこの文献によると、「秦の始皇帝の君臨を示す中国由来の言葉」であるものと考えられます。
正月の到来以前の同じ意味の日本語
前述の通り、正月とは中国由来の言葉ですが、それ以前、日本では恐らく、正月のことを「年取り(トシトリ)」と呼んでいたものと思われます。これは、東北以北や九州に遺る「年取りの膳」や「年取り魚」などの風習がその主な根拠です。宮崎県の郷土料理としても「年取りの膳」はハッキリと残っています。
これは民俗学の方言周圏論の考え方を採用したものですが、中心地から新しい言葉が広まり、中心地から遠く離れた地方ほどに古い言葉が遺るという考え方であり、東北や九州に年取りという言葉が強く残っている様子、(また、その他にも根拠はありますが、)「正月」というのはそもそも中国語であり、元来は「年取り」というのが同様の内容を意味する日本語であったものと考えています。
お正月は縄文時代から続く?
ヲシテ文献には、かつてのお正月の様子が記録されており、特に「ホツマツタヱ」「ミカサフミ」の「トシウチニナスコトノアヤ」の項には、正月という言葉ではなく、「トシトリ」という言葉で、中国文化伝来以前のお正月の過ごし方についての一連の様子が記録されています。これらの文献の真正性については議論の余地があるものの、これらの記述によれば、中国文化が伝来するよりも前(おそらくは縄文時代)から、お正月の文化は日本固有の文化として受け継がれてきたものと私は考えています。
「正月」は、「一月」の代わりに使われた言葉だった
正月が「一月」という言葉の代わりに使われていた様子も、昔の文献には見られます。「正月、二月、三月、四月、五月……」といった具合にです。言い換えますと、「一月」という言葉がそもそも昔の日本では一般的ではなく、その代わりに用いられていたのが「正月」だったと見ることができ、今の「一月」を意味する言葉だったと理解することができます。
お正月は一年中⁉
正月という言葉は、こんにち(2026年現在)では、上記のように、1月頃の時期や風習などの部分を指す言葉として使用されていますが、昔の日本では、より広く「休暇」をあらわす言葉として用いられていた様子も見られます。現在では「ゴールデンウィーク」や「シルバーウィーク」などと横文字で表現することが多くなった横文字の代わりに、以前は正月という言葉が用いられていたもの見られます。
当協会が2023年11月に発表した「お正月の本 みんなのお正月全集2023」には、今成が文献から採集してきた2月~12月の様々な○○正月の研究ノートを掲載しており、一読の価値があります。
日本正月協会がこれまでに発見してきた様々な○○正月の例
| 2月 | 松の正月、猫の正月、キシュウ正月、 山の正月、二月正月、二の正月、 送り正月、シテ正月、オトボ正月 |
| 3月~11月 | 取越正月 |
| 春頃 | 花見正月 |
| 4月 | 田うない正月、種まき正月 |
| 5月 | 苗ふり正月、摘み田正月、祝い盆正月、 ユリコ盆正月、ノウマエ正月(農前正月) |
| 6月 | サナブリ正月、ノウマエ正月、手休み正月、年浴正月 |
| 7月 | 半夏正月、シメリ正月、植え田正月、農正月 |
| 夏 | 陽気正月、オシメリ正月、 タウナイ正月、タネマキ正月 |
| 旧暦8月 | 八月正月、節正月(アラセツ) |
| 9月 | 荒れなし正月、八朔正月 |
| 旧10月 | ミアリ正月 |
| 11月 | 祝い直し正月 |
| 12月 | おとも正月、水こぼし正月、仏の正月、十三正月 |
| 旧12月 | 七島正月 |
正月とは何か?まとめ
ここまでの話をまとめると、「正月とは何か?」という疑問について、少なくとも以下のような定義づけができます。
- 正月とは、中国由来の言葉である。
- 正月とは、新年祝いの風習あるいはその時期を指す言葉である。
- 正月とは、1月全般を表す言葉である。
- 正月とは、広く休暇を表す言葉である。
お正月の起源について
お正月は、いつ、どこから、なぜ始まったのでしょうか?
それを示す文献などの具体的な情報は今のところ日本正月協会では発掘しきれておりません。その一方で、以下の今成の記事が、その手掛かりになるかもしれません。

本記事は、「地獄の窯蓋開き」とその時期に今成が感じている感覚、そして、民俗学で昔から言われてきた「一年二周期性とその起点としての盆と正月」との関連性について示唆する内容です。「祖霊はなぜこの時期にやってくる必要があるのか?」についての今成の個人的な所感です。
お正月の多様性とその要因
このように、ひとえに「お正月」といっても、その言葉の表す意味そのものが多様です。そればかりではなく、お正月の料理、正月の風習、正月飾り、正月の遊び、正月の行事といった文化全般について、地域ごとに様々な違いが見られます。
お正月の文化に多様性がある要因としては、例えば以下のような理由が挙げられます。
- 社会階級や職能による違い(天皇、大名、士農工商など)
- 宗教、宗派による違い(修験道など)
- 地域間の競争関係による分化(隣のムラや藩に負けないよう切磋琢磨)
- 土着信仰や風土の影響(地域の出来事が起源、地域の食べ物が影響、など)
お正月の文化はなぜ大事なのか?
お正月の文化は、地域の個性や特徴をもとに、長い時間をかけて多くの人々が知恵を出し合いながら発展させてきた血と汗と涙の結晶とも言えます。また、そこに至った背景には、厳しい冬を乗り越える中でお互いに支え合ってきた人や自然とのかかわり方の工夫や感謝の気持ちの伝え方の英知が込められています。これらの日本の伝統的自然観は、ただ昔のものとして捨て去るべきものではなく、未来に向けて学ぶべき示唆に富むものです。
こちらについて詳しくは、日本正月協会の基本理念や、行動指針をご覧ください。

お正月の文化とユネスコ無形文化遺産との関わり
ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」「来訪神行事」、そして登録予定の「書道」は、お正月の文化と深いかかわりがあります。
まず来訪神行事としてユネスコ無形文化遺産登録された行事の半分ほどが、小正月の行事です。また、和食はユネスコ無形文化遺産の登録要件として、下記のように記述されており、正月の文化が和食の多様性の代表的存在であることを示唆しています。
- 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
- 健康的な食生活を支える栄養バランス
- 自然の美しさや季節の移ろいの表現
- 正月などの年中行事との密接な関わり
正月の料理
【正月の料理の歴史】正月の料理は「年取りの膳」から「おせち料理」へと発展した
正月の料理について、別の言い方をすると、東北以北に残っている「年取り」の考え方は、外来文化に上書きされるより前の、日本文化の在り様を示しているものと考えられます。その代表的なものが「年取りの膳」です。これは「節句という文化が入ってくるよりも前の、日本の伝統的な正月料理の姿」と見ています。
言い換えますと、「おせち料理は外来文化から発展したものであり、より原初的な日本の正月料理の姿は、『年取りの膳』ではないか?」と考えています。
【正月の料理の定義】正月料理とおせち料理と年取りの膳は区別されるべき
さて、2026年現在の日本では、「正月料理」と「おせち料理」が区別なく使われている様子が伺われます。しかし、私は、これは区別して使われるべき言葉だと考えています。どういった違いがあるかというと、「正月料理」とは、お正月に食べられるごちそう類全般のことを指し、おせち料理はその中の一部のものであると解釈しています。年取りの膳もまた、正月料理の一つです。
まとめると、正月料理は全体を包括する言葉、おせち料理や年取りの膳は、その中の一部を表す言葉だということです。この点について、より詳しくは「おせち料理とは何か?」に記載しています。
【正月の料理の区別】おせち料理と年取りを区別する最大のポイントは?
さて、「おせち料理」と「年取りの膳」は別物であるというのを、ここまでの大きなポイントとして主張してきました。では、両者は一体何がどう違うのでしょうか?
皆さんの夏休みの自由研究の題材にいかがでしょうか?

全国的に見られるお正月の料理の例
- 餅の料理
- 三日とろろ
- 七草がゆ
- 小豆粥
- 寿司

お正月の伝統行事
お正月には、全国各地で様々な伝統行事が開催されますが、多くの伝統行事が存続の危機に瀕しています。
例えば、2024年のはじめに、岩手県奥州市の伝統行事「蘇民祭」が、1,000年以上の歴史に幕を下ろしたことが、大きく報道されました。
東北地方では、観光向けの正月行事が二月に開催されることが多く、この蘇民祭も正月行事の一つです。
このような行事も、担い手不足によって存続が難しくなっています。
お正月の伝統的な慣習
お正月には様々な伝統的な慣習があります。年越しそばを食べることで一年の健康を願ったり、初詣でで神社を訪れて厄払いを行ったりすることが一般化しています。また、門松やしめ縄を飾ることで、邪気を払い新年を迎える準備を整えます。
下記の記事は、外国人に日本のお正月の伝統文化を伝える時に役立ちます。

お正月の調べ方
以下より様々なお正月情報を調べることができます。

※クリックでその地域に移動します。スマートフォンの方は下のリストからどうぞ。
お正月の用語集もございます。

現代のお正月の過ごし方
現代の日本では、お正月の過ごし方も多様化しています。伝統的な行事に加え、友達や家族と一緒に過ごすことも一興です。また、近年では観光地でのイベントや初日の出観賞など、新しい形のお正月の楽しみ方も広まっています。
まとめ:「正月は必要か?」という論点について
「正月って本当に必要なの?」
日本正月協会の活動をしておりますと、このような声が聞かれることもあります。

協会代表である私自身、正月が迫ると、「研究活動のために全国を奔走しなければならない」という理由をつけて、親戚縁者の集まりから逃げる口実に使っている事実もあります(笑)。
とはいえ、このページ内でも再三主張しておりますように、お正月という伝統文化は実に多様であり、多様性の分だけ、人それぞれ様々な想いの詰まったひとときであることに、間違いはなかろうかと思います。敬遠される要素もその時々、時代時代で見られたはずです。
例えば、
「親戚の集まりが面倒だから」
「年賀状の価格が年々上がっている」
といった、現代人に馴染みあるものから、
「獅子舞が家にやってきて、ご祝儀代として金銭を要求される」
「借金取りが取り立てに来る時期」
といった、現代ではすでに忘れられてしまったもの。
「鏡餅の製造に追われ残業がキツイ」
など、業界固有のものまで。

そういった声を受けて、「お正月という文化は、今の時代に本当に必要なのだろうか?」と、私自身、永らく考え続けてきました。
答えは人それぞれでありましょう。
とはいえ、日本正月協会の立場からこの問いを考え抜いた結果、日本正月協会がなぜ活動するかの活動理念や行動指針というカタチで答えがまとまり、当協会の立場をお示しすることにつながりました。
「お正月の文化には、現代人が学ぶべきことが刻まれている。
だからお正月は必要であり、日本正月協会はこれからもその啓発に心血を注いでいく。」
これが「正月って本当に必要なの?」という問いに対する日本正月協会の答えです。


