埼玉県の正月文化というと、関東風のお雑煮や初詣、羽子板などを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、埼玉のお正月を詳しく見ていくと、江戸文化の影響だけでは説明できない、地域ごとの豊かな伝統が見えてきます。
おせち料理には「芽が出る」ことから立身出世を願うくわいの含め煮が並び、人形の街・岩槻や鴻巣、春日部では羽子板や破魔弓が初正月の縁起物として受け継がれています。一方、秩父や比企などでは、かつて盛んだった養蚕文化を背景に、繭玉飾りや削り花、十六花といった小正月の風習が発達しました。
また、利根川・荒川流域ではナマズやコイなどの川魚を正月のご馳走とする食文化が見られ、春日部周辺には養蚕の豊作を願った凧揚げの文化も伝わります。
本記事では、埼玉県の正月文化について、お正月料理・雑煮・正月飾り・年越し・元日の過ごし方・小正月・正月遊び・現在も残る伝統行事・消えつつある風習まで幅広く紹介します。都市部と山間部、平野部と利根川流域など、地域によって異なる埼玉のお正月の姿にも注目してみましょう。

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※本記事は2026年8月時点のネット上の記事を基にしたAIまとめ記事です。ハルシネーションには十分にご注意ください。
1. 埼玉県の正月文化の特徴
埼玉県の正月文化は、江戸(東京)の武家・町人文化の強い影響を受けつつ、県内の盛んな養蚕業や伝統工芸、農業の歴史が深く息づいている点が大きな特徴です。
主な特徴を「食文化」「伝統工芸と縁起物」「小正月(予祝)の風習」の3つに分けて解説します。
1. おせちとお雑煮(食文化の特徴)
- 「くわい」の含め煮
埼玉県(特にさいたま市、越谷市、草加市)は全国トップクラスのくわいの産地です。大きな芽が出ることから「おめでたい」「立身出世」の縁起物として、埼玉のおせち料理には欠かせない郷土料理「くわいの含め煮」が並びます。 - 関東風のすまし雑煮
基本はかつおや昆布のだしに濃口醤油を合わせた、江戸前流のすまし汁です。焼いた「角餅」を使い、鶏肉、小松菜、人参、椎茸などを具材にします。特徴的な点として、干し椎茸の戻し汁をベースに使う家庭が多いことや、越谷市周辺の「太郎兵衛もち」など地域独自のブランド餅を合わせる文化があります。
2. 伝統の正月飾りと縁起物(工芸の街ならではの文化)
- 岩槻や鴻巣の「羽子板・破魔弓」
日本有数の人形の街である岩槻(さいたま市)や鴻巣市、春日部市などでは、初正月を迎える赤ちゃん(男の子に破魔弓、女の子に羽子板)へ贈り、飾る文化が非常に強く根付いています。 - 越谷だるま
年末年始の風物詩として、県東部を中心に「越谷だるま」が新年の縁起物として買い求められます。色白で鼻がやや高く、上品な顔立ちが特徴で、関東各地の初市を彩ります。
3. 「削り花(ケズリバナ)」と小正月(養蚕地帯の風習)
- 1月15日を中心に行われる「小正月(こしょうがつ)」には、かつて秩父・比企地方を中心に広く栄えた養蚕(ようさん)業にまつわる独特な予祝行事が今も残っています。
- 削り花(ケズリバナ)
ニワトコやヌルデなどの木を小刀で薄く削り起こし、菊のような白い花に見立てて作る伝統的な飾り物です。繭(まゆ)の豊作や五穀豊穣を祈り、神棚やお蚕様(蚕神)に供えられます。お蚕様の足の数と同じ「16花」や、1年の月数を表す「12花」を作るのが伝統的な決まりです。
2. 埼玉県の正月|地域による違い(県内比較)
埼玉県内の正月文化は、地形や歴史的背景(江戸に近い平野部か、山に囲まれた秩父地方か)によって大きく異なります。
主な地域差を「秩父・山間部」「平野部・都市部(旧武蔵国中心)」「東部・利根川流域」の3つに分類して比較します。
秩父・山間部:養蚕信仰と独自の食文化が残る地域
- 小正月(養蚕の予祝)が本番
かつて養蚕業で栄えた秩父地方では、元日よりも1月15日前後の「小正月」の行事が盛んです。木の枝に団子を刺して繭(まゆ)の豊作を祈る「ものづくり(繭玉飾り)」や、木を削って花を作る「削り花」を神棚に供える文化が色濃く残っています。 - お雑煮の具材と「小豆粥」
山間部のため、昔は平野部ほど里芋や小松菜が手に入りにくく、具材には大根や人参のほか、収穫して保存しておいた「干し椎茸」や「山菜」を多く使いました。また、1月15日には無病息災を願って「小豆粥(あずきがゆ)」を食べる習慣が定着しています。
平野部・都市部:江戸文化の直系と農業の縁起物
- 江戸直系の「すまし雑煮」
さいたま市や川越市などの平野部・都市部は、江戸(東京)の武家・町人文化を強く受けています。お雑煮は「焼いた角餅」「鶏肉」「小松菜」「なると」を入れた、すっきりとした鰹・醤油だしの江戸前流が基本です。 - 「くわい」の必須性
平野部は水田や低地が多く、くわいの栽培が盛んでした。そのため、この地域の家庭のおせちには、他県や山間部以上に「くわいの含め煮(芽が出る=出世の縁起物)」がほぼ確実に並びます。
東部・利根川流域:だるま市と川魚の食文化
- 初市(だるま市)の熱気
越谷市や春日部市、加須市などの県東部は、新年の「だるま市」との結びつきが非常に強い地域です。年末から1月上旬にかけて各所の寺社で初市が立ち、地元の「越谷だるま」を買い求めて新年の福を願うのが正月の定番行事となっています。 - 「ナマズ」や「鯉」の年取り魚
大晦日や正月に食べる「年取り魚」といえば一般的にサケやブリですが、利根川や荒川の水運・水利に恵まれた東部(吉川市など)では、かつて川魚(ナマズや鯉の甘露煮・洗い)を正月の馳走として食す文化がありました。
3. 埼玉県の正月飾りの特徴
埼玉県の正月飾りは、「江戸(関東)の伝統的なしめ飾り」を受け継ぐ平野部・都市部の文化と、「養蚕・農業の神事」を起源とする山間部・台地部の小正月飾りという、大きく2つの異なる特徴が融合・共存している点が最大の特徴です。 [1]
主な正月飾りの特徴を、4つのポイントに整理して解説します。
1. 初正月の「羽子板・破魔弓」信仰(人形の街ならではの文化)
埼玉県では、赤ちゃんが生まれて初めて迎える「初正月」に、女の子には羽子板、男の子には破魔弓(はまゆみ)を贈り、12月中旬から1月上旬にかけて大々的に飾る風習が他県以上に強く根付いています。 [1, 2, 3]
- 産地との深い結びつき:さいたま市岩槻区、鴻巣市、春日部市など、県内に日本有数の人形の街を擁するため、非常に豪華で伝統的な押絵羽子板や破魔弓が選ばれます。
- 企業の縁起物としても定着:春日部市などでは、羽子板(歌舞伎狂言の男物)が「不景気をはねのける」として、一般家庭だけでなく地元の多くの会社や店舗のオフィスにも飾られます。
2. 関東流の「玉飾り・輪飾り」(玄関や神棚のしめ飾り)
一般的な住居や店舗に飾るしめ縄・しめ飾りは、江戸文化を引き継ぐ「関東流(東京・埼玉・千葉など)」のスタイルが主流です。
- 玉飾り(たまかざり):太いしめ縄を輪っかにし、中央に橙(だいだい)や裏白(うらじろ)、紅白の水引などをあしらった豪華な飾りです。主に玄関に飾られます。 [1]
- 輪飾り(わかざり):細い藁の輪に譲葉(ゆずりは)などを添えた簡素なもので、キッチン(火の神様)やトイレ(水の神様)、神棚などに複数個飾られます。 [1, 2, 3]
3. 繭玉(まゆだま)団子(全県的な養蚕・農業の予祝飾り)
1月15日前後の「小正月」に飾られる、埼玉の代表的な伝統飾りです。 [2]
- コナラやヤナギ、カツノキなどの木の枝に、米粉で作った丸い団子(ピンク、白、緑など)をいくつも刺して飾ります。
- かつて全県下で盛んだった養蚕(ようさん)業において、団子を「本物の繭」に見立てて豊作を祈願したことに由来します。現在でも地域コミュニティや神社、農家を中心に受け継がれています。
4. 削り花(ケズリバナ)とミニチュア飾り(県北・西部の台地山間部)
特に県北部、秩父地方、比企地方、県央の台地部では、他県にはあまり見られない独特な手作りの神棚飾りがみられます。
- 削り花:ニワトコやヌルデの木を小刀で薄く削り起こし、花の形(繭や農産物の象徴)に見立てた飾りです。地域によって使う木の種類が変わり、12花や16花など作る数にも決まりがあります。
- 農具のミニチュア(作り物):木や竹で小さく作った「クワ(鋤)」や「包丁」、あるいは「刀」などを削り花や粟穂(あわほ)・稗穂(ひえほ)と一緒に神棚に飾ります。これらは県東部(平野側)にはほとんど見られず、県西・県北の山地や台地部特有の農耕信仰の飾りです。 [2]
4. 埼玉県の正月|雑煮文化の特徴
埼玉県の正月における雑煮文化は、江戸(東京)から伝わった武家文化をベースにしつつ、県内各地の農業の歴史や地域資源が色濃く反映されていることが特徴です。
主な特徴を「基本スタイル」「地域による具材・だしの違い」「埼玉ならではのこだわり」の3つに分けて解説します。
1. 基本スタイル(江戸前流のすまし雑煮)
埼玉県全域で最も広く食べられているのは、典型的な「関東風(江戸前流)」の雑煮です。
- 餅の形と調理法:四角い「角餅」を使い、必ず香ばしく焼いてから汁に入れます(「敵をのす」という武家の縁起担ぎに由来)。
- 汁(だし・味付け):かつお節や昆布の利いた、濁りのないすまし汁(醤油仕立て)が基本です。
2. 地域による具材や「隠し味」の違い
同じ「すまし汁×焼角餅」のベースでも、地域(平野部か山間部か)によって具材の組み合わせやだしの取り方に違いが見られます。
- 都市部・平野部(さいたま市・川越市など)
- 定番の具材:鶏肉、小松菜(またはほうれん草)、人参、大根、なると(または蒲鉾)など。
- 特徴:彩りが豊かで、江戸の町で流行したスタイルがそのまま定着しています。「名(菜)を上げる」「株(かぶ)を上げる」という縁起を担ぎ、小松菜や里芋(頭芋)を入れる家庭が多く見られます。
- 秩父・山間部(秩父市・皆野町など)
- 定番の具材:大根、人参、里芋、干し椎茸、豆腐、山菜など。
- 特徴:かつて冬場に新鮮な青物野菜(小松菜など)が手に入りにくかった山間部では、秋に収穫して保存しておいた「干し椎茸」や「乾燥野菜」が主役になります。鶏肉の代わりに、昔ながらの豆腐や油揚げを入れる家庭も残っています。
- 県北・利根川流域(熊谷市・本庄市など)
- 隠し味:この地域では、かつお節や昆布だけでなく、「干し椎茸の戻し汁」をベースにだしを取る家庭が非常に多いのが特徴です。濃厚な椎茸の旨味が効いた、独自の味わい深い雑煮になります。
3. 埼玉ならではの「お餅」へのこだわり
埼玉県内には、お雑煮に入れる「お餅」自体に独自の地域ブランドや文化があります。
- 越谷市の「太郎兵衛もち(たろうべえもち)」
県東部の越谷市周辺では、江戸時代から続く伝統的な高級餅米を使った「太郎兵衛もち」をお雑煮に使う文化があります。コシが非常に強く、煮崩れしにくいため、「お雑煮に最適なお餅」として正月用に買い求められます。 - 「のし餅」を家庭で切る文化
切り餅のパックが普及する前は、年末に大きな「のし餅」を仕入れ、大晦日や元旦の朝に家族で四角く切り分けてお雑煮に使う光景が、県内の多くの農家や一般家庭の定番でした。
5. 埼玉県のお正月料理の特徴

埼玉県のお正月料理は、江戸(東京)の洗練された食文化をベースに、埼玉が誇る豊かな「農業」「養蚕業」「川魚の歴史」が色濃く反映されていることが大きな特徴です。
主な特徴を「おせちの定番縁起物」「地域特有の正月食材・郷土料理」「年取り魚(大晦日〜正月)の文化」の3つに分けて解説します。
1. おせちの主役!全国トップクラスの「くわい」
埼玉のおせち料理に絶対欠かせないのが、「くわいの含め煮(煮物)」です。
- 全国有数の産地:さいたま市、越谷市、草加市などの平野部は、お正月用の「青くわい」の全国的な一大産地です。
- 縁起物としての意味:くわいは、勢いよく大きな芽が出ることから「めでたい」「立身出世」の象徴とされます。埼玉の家庭では、他県以上に大ぶりで立派なくわいが、おせちの重箱の特等席に並びます。ほろ苦さとホクホクした食感が特徴です。
2. 地域に根差した正月の郷土料理
平野部と山間部(秩父地方)で、お正月に食べられる独自の料理があります。
- つとっこ(秩父地方)
秩父の山間部では、お正月に「つとっこ」と呼ばれる郷土料理を作る風習があります。藁(わら)を編んで作った筒の中に、もち米、小豆、栗などを詰め、じっくり茹で上げたものです。本来は神様への供え物(神饌)ですが、お正月のハレの日のご馳走として家族で分け合って食べます。 - 小豆粥(県内全域・特に秩父)
1月15日の「小正月」には、無病息災と五穀豊穣を願って「小豆粥(あずきがゆ)」を食べる文化が強く残っています。特に秩父地方では、前述の「繭玉(まゆだま)団子」をお粥に割り入れて一緒に煮るなど、養蚕の神事と深く結びついています。 - そこつ煮・がめ煮(農家文化)
県内の農家では、お正月に大根、人参、ごぼう、里芋などの根菜類を鶏肉と一緒に大きな鍋で濃いめに煮出す「そこつ煮(地域によっては、がめ煮・煮しめとも呼ぶ)」を作り置きし、三が日の間、何度も温め直して食べる習慣がありました。
3. 「川魚」を味わう年取り・正月の食文化
大晦日や正月に食べる「年取り魚」といえば一般的にはサケやブリ(新巻鮭など)ですが、川に囲まれた水郷地帯である県東部(吉川市、三郷市、加須市など)では、独特な魚食文化があります。
- ナマズやコイの料理
江戸時代から川魚料理の名産地として知られる地域では、お正月の馳走として「ナマズのたたき(揚げ物)」や「コイの甘露煮・洗い(刺身)」を食卓に並べる風習が今も受け継がれています。
6. 埼玉県の正月|年越しの風習
埼玉県の年越し(大晦日から元旦にかけて)の風習は、江戸(東京)の洗練された町人文化の流入と、豊かな水郷地帯や山間部が育んだ「農漁業の暮らし」が混ざり合っている点が特徴です。
主な年越しの風習を「年取り魚と食文化」「伝統的な大晦日の過ごし方」「二年参りと初詣」の3つに分けて解説します。
1. 年取り魚と大晦日の食文化
大晦日の夜に新年の神様を迎えるために食べる「年取り膳(ご馳走)」には、埼玉ならではの明確な地域差があります。
- 東部・利根川流域の「川魚(ナマズ・コイ)」
川に囲まれた水郷地帯である吉川市、三郷市、加須市などでは、正月や年越しに海魚ではなく「ナマズのたたき(揚げ物)」や「コイの甘露煮」をご馳走として食べる風習が深く根付いていました。 - 全県的な「新巻鮭(あらまきざけ)」
平野部を中心に、江戸の武家文化の影響から「栄える」に通じる「サケ(鮭)」が年取り魚の主流です。大晦日に鮭の焼き物を食べ、残った頭や骨を正月の三が日に三平汁や煮物にするなど、無駄なく使い切る知恵もありました。 - 川越や武蔵野台地の「手打ちうどん・蕎麦」
年越しには「年越し蕎麦」が一般的ですが、全国有数のうどん文化を持つ埼玉県(特に武蔵野台地や県北)の古い農家などでは、大晦日の夜や元旦の昼に自家製の「手打ちうどん(年越しうどん・年明けうどん)」を打って食べる家庭も多く存在しました。
2. 「お年取り」と大晦日の神事
新年の神様(歳神様)を厳かにお迎えするための、古い農家を中心とした習わしです。 [1]
- 「宵正月(よいしょうがつ)」の床飾り
大晦日の夕方、神棚や床の間に鏡餅を飾り、灯籠やローソクに火を灯して、まだ見ぬ元旦を一足早く祝い始める「お年取り」の儀式が行われていました。 - 火の神様・水の神様への感謝
大晦日の夜、1年間お世話になった台所の「荒神様(火の神)」や井戸の「水神様」に、小さなしめ割り(輪飾り)を供え、新しいお水(若水)を汲む準備を整えるのが大晦日の重要な仕事でした。
3. 「二年参り」と大宮氷川神社の初詣
大晦日の深夜から元旦にかけて参拝する文化も、埼玉ならではの活気があります。
- 二年参り(にねんまいり)
大晦日の夜(旧年)に地元の氏神様(神社)へお参りし、境内で除夜の鐘を聞きながら元旦(新年)を迎えて再びお参りする「二年参り」の風習が、県内各地の古社で今も盛んです。 - 武蔵一宮「氷川神社」への参詣
さいたま市の大宮氷川神社は、大晦日から元旦にかけて全国屈指の参拝客(例年200万人以上)で埋め尽くされます。大晦日の夜から参道には無数の露店が立ち並び、日付が変わる瞬間は県内最大の熱気に包まれます。
7. 埼玉県の正月|元日の過ごし方
埼玉県の元日(1月1日)の過ごし方は、江戸前流の洗練された儀礼を重んじる都市部の文化と、自然の恵みや地域のつながりを大切にする農村・山間部の文化が調和している点が特徴です。
主な元日の過ごし方を、朝から夜までの時間軸と特徴的な風習に分けて解説します。
1. 朝一番の神事:「若水汲み(わかみずくみ)」
元日の朝、家族の長(主に家長)が誰とも口をきかずに井戸や水道からその年最初の水を汲む「若水汲み」の風習が、古くからの農家を中心に受け継がれてきました。
- 意味合い:若水は年神様へのお供え物(神饌)であり、この水で元日の「お雑煮」を作ったり、新年の最初のお茶(福茶)を淹れたりします。若水を飲むことで、1年の邪気を払い、若返りの力を得られると信じられていました。 [1]
2. 朝食:「初座敷」と関東風お雑煮
若水を神棚に供え、家族が揃って新年を祝う最初の食事(初座敷・朝膳)が始まります。
- 伝統的な挨拶:家族全員が正装し、家長から順に「おめでとうございます」と新年の挨拶を交わします。
- 埼玉のお雑煮とおせち:香ばしく焼いた「角餅」と「小松菜」を入れた江戸前流のすまし雑煮を味わい、特産の「くわいの含め煮」が入ったおせち料理を囲みます。
- 「屠蘇(とそ)」の儀式:無病息災を願い、屠蘇散(とそさん)を浸したお酒を、年少者から年長者へと順に回し飲みする文化も一般的です。
3. 日中:武蔵国の古社への「初詣」
元日の日中は、県内各地の歴史ある社寺へ初詣に出かけるのが定番の過ごし方です。埼玉には全国的に有名な大古社が多く、元日から大いに賑わいます。
- 大宮氷川神社(さいたま市):武蔵一宮であり、元日だけで数十万人、三が日で200万人以上が訪れる県内最大の初詣スポットです。
- 川越氷川神社・喜多院(川越市):小江戸・川越の総鎮守や、徳川家ゆかりの寺院へ、厄除けや家内安全を願って多くの人が参拝します。
- 秩父神社(秩父市):山間部では、知知夫国の総鎮守である秩父神社へ詣で、山の神様や地域の平穏を祈るのが古くからの習わしです。 [1]
4. 元日のタブー(忌み事)
埼玉県内の多くの地域(特に農村部)では、元日に年神様を静かにお迎えし、福を逃さないための「やってはいけないこと(忌み事)」が厳しく守られていました。
- 掃除・洗濯をしてはいけない:元日に箒(ほうき)を使うと、せっかく来てくれた年神様(福)を掃き出してしまうとされています。また、水仕事(洗濯など)は若水の福を洗い流してしまうため、元日は一切行わない家庭が多くありました。
- 刃物を使ってはいけない:包丁などの刃物を使うことは「縁を切る」につながるため、元日の料理は前日までに作り置きしたおせちや、そこつ煮(がめ煮)を温め直して食べるのが基本でした。 [1]
8. 埼玉県の小正月(1月15日前後)

埼玉県の小正月(1月15日前後、または14日〜16日の3日間)は、1月1日の大正月が「神迎え」の儀礼であるのに対し、「農作物の豊作(予祝)」や「家族の無病息災」を祈る生活に根ざした行事として非常に重視されてきました。 [1, 2]
かつて全県下、特に秩父・西部・北部地方で一大産業だった養蚕(ようさん)業の信仰が色濃く反映されているのが大きな特徴です。 [1]
主な特徴を「伝統の飾り物」「火祭りと行事」「食文化」に分けて解説します。
1. 養蚕・農耕の豊作を祈る独自の飾り物
- 繭玉(まゆだま)飾り・モノツクリ
コナラやヤナギ、カシ、桑などの木の枝に、米粉(上新粉)で作った色とりどりの団子を刺して飾ります。団子を「本物の蚕の繭」に見立て、繭の大量収穫を祈願したものです。所沢や狭山などでは、団子をサツマイモや大根の形にして野菜の豊作を祈る家庭もありました。 [1, 2] - 削り花(ケズリバナ)
秩父や比企地方に伝わる独特の飾りです。ニワトコやヌルデの木の皮を小刀で薄く削り起こし、菊のような白い花に見立てて作ります。お蚕様の足の数と同じ「16花」や、1年の月数を表す「12花」を削り出し、繭玉飾りとともに神棚や蚕神様に供えられます。 [, 2, 3]
2. 正月様を送り出す火祭り(どんど焼き・道陸神焼き)
正月飾りを燃やし、その年の無病息災を願う火祭りが県内各地で行われます。 [1, 2]
- どんど焼き(県内全域)
青竹や藁で組んだやぐらに、おせちを飾ったしめ縄や古札、前年のだるまなどを持ち寄って燃やします。この火で焼いた繭玉団子や餅を食べると、「その年は風邪をひかない」「健康に過ごせる」と信じられています。 [, 2] - 道陸神焼き(どうろくじんやき / 秩父地方)
秩父市上吉田(大波見地区)などでは、小正月を「道陸神(結界・旅の神)」の祭りとして祝い、河原で大規模な火祭りを行います。燃え残りの松の木(燃えっくじ)を家に持ち帰り、魔除けとして玄関に吊るす独自の風習が今も受け継がれています。 [1]
3. 小正月の伝統的な食文化
- 小豆粥(十五日粥)
1月15日の朝、邪気を払うとされる朱色の小豆を入れた「小豆粥(あずきがゆ)」を食べて無病息災を祈る風習が広く残っています。地域によっては、飾っていた繭玉団子をお粥に割り入れて一緒に煮て食べることもあります。 - 女正月(おんなしょうがつ)
大正月の準備や三が日のもてなし、親戚の応対などで忙しく働き通した女性たちが、ようやく一息ついてゆっくり休む日(女正月)としても大切にされてきました。 [1, 2, 3, 4]
埼玉県の小正月は、現在でも幼稚園・保育園の年中行事や神社の地域イベントとして大切に守られています。
9. 埼玉県の正月遊びの特徴
埼玉県の正月遊びは、凧揚げや羽根突きといった全国的な伝統を守りつつも、「人形の街」や「養蚕業」といった埼玉独自の地域産業、そして圧倒的な知名度を誇るローカルかるた文化と深く結びついている点が大きな特徴です。 [1, 2]
主な特徴を4つのポイントに分けて解説します。
1. 埼玉県民の定番!「彩の国21世紀郷土かるた」
埼玉の家庭や学校、地域コミュニティの正月遊びとして、最も有名で広く親しまれているのが「彩の国21世紀郷土かるた」です。 []
- 圧倒的な普及率:1982年に前身となるかるたが作られて以来、県内の多くの子どもたちが小学生時代にこのかるたに親しみます。
- 埼玉を学ぶ内容:「地名のいわれ」や「名産品(深谷ねぎ、草加せんべいなど)」、「偉人(渋沢栄一など)」が読み札になっており、遊びながら埼玉の歴史や地理が自然と身につくインドア正月遊びの定番です。現在でも子ども会などによる県大会が開催されています。 []
2. 「人形の街」が生んだ豪華な羽根突き(はねつき)文化
さいたま市岩槻区、鴻巣市、春日部市など、埼玉県には日本を代表する人形の産地(職人の街)が集まっています。
- 「厄をはねのける」縁起物:女の子の初正月を祝って贈られる「押絵羽子板」の生産が非常に盛んで、お正月に飾るだけでなく、実際に羽根を突いて遊ぶ文化の背景を支えてきました。 [1, 2]
- 不景気をはねのける商売繁盛の遊び:一般家庭の遊びにとどまらず、春日部市などでは企業のオフィスにも大きな羽子板が飾られ、「新年の不景気や邪気をはねのける」として縁起を担ぐシンボルとなっています。
3. 「養蚕の吉凶占い」を起源とする凧揚げ(たこあげ)
お正月の外遊びの代表格である「凧揚げ」ですが、埼玉、特に県東部の利根川・江戸川流域(春日部市周辺)では特別な歴史があります。 [1]
- 養蚕の豊作を占う神事:江戸時代後期、お坊さんが地元の人々に「凧を高く揚げると、お蚕様(繭)の値段が上がる(豊作になる)」と伝えたことが始まりとされています。 [1]
- 大凧文化への発展:この信仰がのちに巨大化し、現在では5月に開催される「春日部大凧あげ祭り(百畳敷の大凧)」へと発展しましたが、そのルーツは新年の健やかな成長と農作物の豊作を祈る正月の凧揚げにあります。 [1]
4. 地域で楽しむ「どんど焼き」での昔遊び
小正月(1月15日前後)に行われる火祭り「どんど焼き(道陸神焼き)」の会場や、県内の主要な寺社・レジャー施設の正月イベントでは、地域ぐるみで伝統遊びを継承する動きが盛んです。 [1, 2]
- 世代間交流の場:どんど焼きのやぐらが燃えるのを待つ間、子どもたちが地域の高齢者から「コマ回し」「だるま落とし」「竹馬」などのコツを教わりながら一緒に遊ぶ光景が、県内の多くの地域(狭山市、秩父地方など)で今も大切にされています。 [1]
10. 埼玉県の正月|現在も残る伝統行事
埼玉県内には、大都市化や少子化といった時代の変化に対応しながら、地域住民や保存会の手によって現在も大切に受け継がれている伝統的な正月行事・神事が数多く存在します。 [1, 2]
現在も実施されている埼玉の代表的な正月伝統行事を、時期と地域ごとにまとめて解説します。
1. 元旦〜三が日:新年の幕開けを告げる神事
- 所澤神明社の「熊手市」(所沢市)
元日の午前0時の訪れとともに境内で行われる、「日本一早い正月行事」として知られる初市です。新年の商売繁盛や家内安全を願い、威勢の良い手締め(三本締め)の掛け声とともに縁起物の熊手が買い求められます。 [1] - 鷲宮神社の「西原神楽(さいばらかぐら)」(久喜市)
関東最古の大社とされる鷲宮神社にて、元旦に奉納される国の重要無形民俗文化財です。江戸時代から続く伝統的な神楽であり、新年の五穀豊穣や厄除けを祈願して、厳かな舞が境内で披露されます。 [, 2] - 川越七福神めぐりの「七福神仮装行列」(川越市)
江戸時代から続く「川越七福神」を巡る新春の風習です。1月上旬(主に元旦や初不動の縁日など)には、七福神に扮した人々が小江戸川越の蔵造りの街並みを練り歩くパレード(パレードや行列イベント)が行われ、新春の観光風物詩となっています。 [1, 2]
2. 1月上旬:商売繁盛と伝統工芸の初市
- 喜多院の「初大師(だるま市)」(川越市)
1月3日、厄除け大師として知られる喜多院で行われる関東三大だるま市の一つです。境内には無数の露店が立ち並び、色鮮やかな「川越だるま」や「新井だるま」を買い求める参拝客で埋め尽くされます。 - 大光普照寺の「だるま市」と金鑽神社参拝(神川町)
1月3日、児玉郡神川町にある大光普照寺(だいこうふしょうじ)周辺で大規模に開催される歴史あるだるま市です。すぐ近くにある武蔵二宮の古社「金鑽神社(かなさなじんじゃ)」への初詣と合わせて、県北の多くの人々が訪れる重要な新春行事です。 [1]
3. 1月14日〜15日前後:小正月の火祭りと伝統継承
- 大波見(おおはみ)地区の「道陸神焼き(どうろくじんやき)」(秩父市)
1月14日の夜、秩父市上吉田の大波見集落で行われる伝統的な小正月の火祭り(どんど焼きの一種)です。集落の大人たちが青竹と家庭から持ち寄った松飾りで円すい形の美しいやぐらを組み立て、河原で豪快に燃やします。少子化の波を受けつつも、現在は地域の大人たちの手で大切に保存・継承されており、燃え残りの「燃えっくじ」を魔除けとして玄関に吊るす独自の風習が今も生きています。 [] - 県内各地の「どんど焼き・左義長(さぎちょう)」
1月15日前後、県内各地の神社や川原で現在も広く実施されています。- 東松山市の箭弓(やきゅう)稲荷神社(1月7日の「お焚き上げ」)
- 川口市の鎮守氷川神社、北本市の高尾氷川神社(1月15日に終日開催)
- 久喜市の菖蒲神社(「左義長」と呼ばれる)
これらの火祭りで焼いた餅や団子を食べることで、無病息災を得るという信仰が今も地域コミュニティの行事として機能しています。 [1, 2]
- 養蚕農家による「十六花(じゅうろくばな)」作り(秩父・長瀞町など)
秩父地方や長瀞町の限られた農家では、現在でも小正月にニワトコの木を削り、蚕の足の数に見立てた「十六花(削り花)」を作って神棚に供える神事が、伝統技術の保存として個人的・地域的に受け継がれています。 [1, 2]
このように、埼玉の正月の伝統行事は、地域の「歴史」や「産業(人形・だるま・養蚕)」を現代に伝える貴重な文化として、今なお息づいています。 [1, 2]
11. 埼玉県の消えつつある正月文化

埼玉県の正月文化の中で、時代の変化や産業の衰退、少子高齢化によって急速に姿を消しつつある、あるいはすでに激減してしまった風習・行事について、主な4つの要因と現状をまとめます。
1. 養蚕業の激減による「小正月・予祝(よしゅく)文化」の消滅危機
かつて埼玉県(特に秩父、比企、児玉地方など)は全国有数の養蚕地帯であり、正月以上に1月15日の「小正月」が重視されていました。しかし、県内の養蚕農家数が極わずか(秩父地域でも実質2軒程度)まで減少したことで、以下の風習が存続の危機に瀕しています。 [1]
- 削り花(ケズリバナ)・十六花(じゅうろくばな)の途絶
ニワトコの木を小刀で薄く削り、蚕の繭や花の形を作る職人技とも言える風習です。お蚕様の足の数(16本)にちなんだ「十六花」を神棚に供える文化は、作れる高齢の農家がほぼいなくなり、現在は地域の博物館や保存会によるイベント展示でかろうじて技術が残されている状態です。 [, 2, 3] - 家庭での「繭玉(まゆだま)飾り・ものづくり」の減少
かつてはどこの農家でも、元旦が過ぎると山からコナラやヤナギの木を切り出し、家中で米粉の団子(繭玉)を刺して豊作を祈っていました。現在、一般家庭でこれを行うケースは極めて稀になり、地域の公民館や幼稚園などの「体験行事」としてのみ存続しています。 [, 2, 3, 4]
2. 都市化と防災による「どんど焼き(左義長)」の縮小・廃止
小正月の飾りや前年のだるまを燃やす火祭り「どんど焼き」は、かつては集落の田んぼや小川の河原、交差点などで小規模かつ無数に行われていました。 [1, 2]
- 空き地の減少と消防上の制限
特にさいたま市などの南部や平野部の住宅地では、煙に対する苦情、火災リスク、またプラスチック製正月飾りの混入による環境問題から、町内会単位のどんど焼きが次々と中止・廃止に追い込まれました。現在では、広大な境内を持つ一部の主要神社(鎮守氷川神社や高尾氷川神社など)や、秩父地方などの山間部に集約されつつあります。 [, 2]
3. 食生活の変化と「自家製」正月料理の衰退
- 「のし餅」のカット、手打ちうどんの途絶
昭和中期頃まで、埼玉の多くの農家や一般家庭では、年末に一升瓶などで「のし餅」を平らに伸ばし、大晦日や元旦の朝に家族総出で四角く切り分けてお雑煮に入れていました。また、大晦日や正月に「年越し・年明け」として自宅で小麦粉からうどんを打つ「手打ちうどん・蕎麦」の文化もありました。現在は個包装の切り餅や市販の麺、冷凍食品の普及により、正月にわざわざ手作業で行う家庭はほぼ見られなくなっています。 [1] - 「川魚」を食べる年取り・正月膳の減少
利根川・荒川流域(吉川市など)を中心に親しまれてきた「ナマズのたたき」や「コイの甘露煮」を正月のハレの日の馳走とする文化も、海魚(マグロやブリ)やカニ、洋風オードブルにおせちの主役を譲り、日常的に川魚を扱う専門店や高齢の世代に限られるようになっています。
4. ライフスタイルの変化による「元日のタブー・儀礼」の形骸化
- 若水汲み(わかみずくみ)の消滅
元日の早朝に、井戸や水道から誰とも口をきかずに最初のお水を汲み、神棚に供えて雑煮を作る風習です。水道設備が完全に普及し、元日の朝も24時間営業のコンビニやスマートフォンの通知で始まる現代において、「若水を神聖なものとして汲み、神棚に静かに手を合わせる」という一連の儀礼を行う家庭は急速に失われました。 - 「元日は掃除・洗濯・刃物NG」の形骸化
「神様(福)を掃き出さないように箒を使わない」「縁を切らないように包丁を使わない」という元日のタブーは、元日から営業する商業施設が増え、共働き世帯が「正月の休み期間中にまとめて家事を済ませる」ようになったことで、意識されることが少なくなっています。 [1, 2, 3, 4]
これら消えつつある文化に対し、埼玉県内の博物館(埼玉県立歴史と民俗の博物館など)や各自治体の文化財保護課では、民俗資料としての記録保存や、若い世代向けの手作り体験ワークショップを開催するなど、形を変えた継承活動が模索されています。
12. 日本正月協会の見解

埼玉県は東京都に隣接し、多くの移住者が移り住んでくる都市です。そのため、伝統的な風習などについて埋もれてしまい、脚光を浴びづらい土地風土をしています。その傍らで、長くこの地に住まわれた方々の間では、連綿と伝統文化が受け継がれています。ぜひ、そういった側面にもスポットライトが当たっていくと素晴らしいと思います。
13. 埼玉県の正月文化データ
| 項目 | 内容 |
| くわいの含め煮 | さいたま市、越谷市、草加市が全国有数の産地。「大きな芽が出る」ことから立身出世の縁起物として埼玉のおせちに欠かせない料理。 |
| 関東風すまし雑煮 | 焼いた「角餅」を使い、鶏肉、小松菜、人参、なるとなどを具材にした醤油仕立ての雑煮。江戸文化の直系。 |
| 干し椎茸のだし | 県北・利根川流域(熊谷・本庄など)や秩父の山間部を中心に、雑煮のだしに干し椎茸の戻し汁をベースとして使う家庭が多い。 |
| 太郎兵衛もち | 越谷市周辺で江戸時代から続く高級餅米のブランド。コシが強く煮崩れしにくいため、正月のお雑煮用として重宝される。 |
| つとっこ | 秩父の山間部に伝わる正月の郷土料理。わらで編んだ筒にもち米、小豆、栗などを詰めてじっくり茹で上げた神聖なご馳走。 |
| そこつ煮(がめ煮) | 根菜類と鶏肉を大鍋で濃く煮出した農家のおせち料理。三が日の間、何度も温め直して食べる。 |
| 川魚(ナマズ・コイ)料理 | 水郷地帯の県東部(吉川・加須など)の伝統。大晦日や正月の「年取り魚」として、ナマズのたたきやコイの甘露煮を食べる。 |
| 年越し・年明けうどん | 武蔵野台地や県北などのうどん文化圏において、大晦日の夜や元旦の昼に自家製の手打ちうどんを食べる風習。 |
| 羽子板・破魔弓の贈答 | 女の子に羽子板、男の子に破魔弓を贈り、初正月を大々的に祝う風習。岩槻や鴻巣、春日部など人形の街が背景にある。 |
| 越谷だるま | 新年の縁起物。色白で鼻がやや高く上品な顔立ちが特徴。1月3日の川越喜多院「初大師」などのだるま市で広く買い求められる。 |
| 玉飾り・輪飾り | 江戸文化を引き継ぐ関東流のしめ飾り。玄関には豪華な「玉飾り」、神棚や水回りには簡易的な「輪飾り」を複数飾る。 |
| 若水汲み(わかみずくみ) | 元日の朝、誰とも口をきかずにその年最初の水を汲む神事。雑煮や福茶に使い、一年の邪気を払うとされる(現在は激減)。 |
| 初詣(主要社寺) | 全国屈指の参拝客数を誇る「大宮氷川神社」をはじめ、川越氷川神社、喜多院、秩父神社などへの元旦・三が日の参拝。 |
| 所澤神明社の熊手市 | 元日の午前0時の訪れとともに開催される「日本一早い正月行事」。威勢の良い手締めの声とともに熊手が買われる。 |
| 鷲宮神社の西原神楽 | 久喜市にある関東最古の大社で元旦に奉納される国の重要無形民俗文化財。五穀豊穣と厄除けを祈る厳かな神楽。 |
| 川越七福神仮装行列 | 1月上旬に開催される小江戸川越の新春観光風物詩。七福神に扮した人々が蔵造りの街並みを練り歩く。 |
| 元日のタブー(忌み事) | 福を掃き出さないための「掃除・洗濯の禁止」、縁を切らないための「刃物(包丁)の使用禁止」という古くからの農村の戒め。 |
| 繭玉飾り(ものづくり) | 1月15日前後の小正月行事。木の枝に色とりどりの団子を刺し、本物の蚕の繭に見立てて養蚕の豊作を祈る予祝飾り。 |
| 削り花(ケズリバナ) | 秩父・比企地方の小正月文化。ニワトコ等の木を小刀で薄く削り起こして作る花飾り。お蚕様の足の数にちなんだ「十六花」などがある。 |
| 農具のミニチュア飾り | 県北・西部の山間台地部特有の農耕信仰。削り花や粟穂とともに、木や竹で作った小さなクワや包丁を神棚に飾る。 |
| 小豆粥(十五日粥) | 1月15日の小正月の朝に、無病息災を願って食べる朱色の粥。飾っていた繭玉団子を割り入れて一緒に煮る地域もある。 |
| 女正月(おんなしょうがつ) | 年末年始の準備やもてなしで忙しく働き通した女性たちが、小正月(1月15日)にようやく一息ついて休む日。 |
| どんど焼き(左義長) | 小正月前後に正月飾りや古いだるまを燃やす全県的な火祭り。この火で焼いた餅や団子を食べるとその年は風邪をひかないとされる。 |
| 道陸神焼き | 秩父市大波見地区などに残る独自の小正月火祭り。河原で巨大なやぐらを燃やし、燃え残りの松の木(燃えっくじ)を魔除けとして玄関に吊るす。 |
| 彩の国21世紀郷土かるた | 県内の小学生や地域で広く普及しているインドア正月遊びの定番。埼玉の地名、名産、偉人が読み札になっている。 |
| 正月凧揚げ(養蚕占い) | 春日部などの利根川流域が発祥。江戸時代に「凧を高く揚げるとお蚕様の値段が上がる」とされた信仰がルーツ(現在の5月の大凧あげ祭りの起源)。 |
FAQ
これまでに紹介した埼玉県の正月文化について、特徴的なポイントを分かりやすくFAQ(よくある質問)形式でまとめました。
【食文化・お正月料理に関するFAQ】
- Q埼玉のおせち料理に「くわい」が絶対に欠かせないのはなぜですか?
- A
埼玉県(さいたま市、越谷市、草加市など)が全国トップクラスのくわいの産地だからです。くわいは勢いよく大きな芽が出るため、「めでたい」「立身出世」の縁起物として、他県以上に大ぶりなものが重箱の主役として並びます。
- Q埼玉のお雑煮にはどのような特徴がありますか?
- A
江戸文化を引き継ぐ「関東風(江戸前流)のすまし雑煮」が基本です。四角い「角餅」を香ばしく焼いてから入れ、鶏肉や小松菜、なるとなどを具材にします。また、県北や山間部では「干し椎茸の戻し汁」をベースにだしを取る家庭が多いのも特徴です。
- Qお正月に「サケ」や「ブリ」ではなく「川魚」を食べる地域があるというのは本当ですか?
- A
本当です。利根川や荒川などの水郷地帯である県東部(吉川市、加須市など)では、かつて大晦日や正月の「年取り魚」として、ナマズのたたき(揚げ物)やコイの甘露煮・洗い(刺身)をご馳走として食べる独特の川魚食文化がありました。
- Q大晦日や元旦に「うどん」を食べる風習もあるのですか?
- A
はい。全国有数のうどん文化を持つ武蔵野台地や県北の古い農家などでは、年越し蕎麦の代わりに自家製の「手打ちうどん(年越しうどん・年明けうどん)」を打って食べる伝統が残っています。
【正月飾り・縁起物に関するFAQ】
- Q埼玉の家庭で「羽子板」や「破魔弓」が盛んに飾られる理由は?
- A
埼玉県内には、さいたま市岩槻区、鴻巣市、春日部市など、日本有数の「人形の街(職人の街)」が集まっているためです。赤ちゃんが初めて迎える「初正月」のお祝い(女の子に羽子板、男の子に破魔弓)として、非常に豪華な工芸品を贈る文化が強く根付いています。
- Q埼玉の玄関で見かける「しめ飾り」や「だるま」の特徴は?
- A
しめ飾りは、太い縄を輪にした豪華な「玉飾り」を玄関に、簡易的な「輪飾り」を神棚や水回りに飾る関東流スタイルです。また、新年には色白で上品な顔立ちの「越谷だるま」を初市(だるま市)で買い求め、1年の福を願うのが定番です。
【年越し・元日の過ごし方に関するFAQ】
- Q元日の朝に行われる「若水汲み(わかみずくみ)」とは何ですか?
- A
元日の早朝、誰とも口をきかずにその年最初の水を汲む神事です。若水は年神様へのお供え物になり、この水でお雑煮を作ったりお茶を淹れたりして邪気を払いました。現在はライフスタイルの変化により激減しています。
- Q埼玉の農村などに伝わる「元日のタブー(忌み事)」にはどんなものがありますか?
- A
主に「掃除・洗濯の禁止」と「刃物(包丁)の使用禁止」です。元日に箒を使うと福を掃き出してしまうとされ、刃物は「縁を切る」につながるため嫌われました。そのため、元日は前日までに作り置きしたおせちなどを温め直して過ごすのが伝統でした。
【小正月・正月遊び・消えつつある文化に関するFAQ】
- Q1月15日前後の「小正月」に飾る「繭玉(まゆだま)」や「削り花」とは?
- A
かつて埼玉(特に秩父や比企地方など)で大いに栄えた養蚕(ようさん)業の豊作を祈る予祝(よしゅく)飾りです。木の枝に色とりどりの団子を刺して「本物の繭」に見立てたり(繭玉)、ニワトコの木を薄く削り起こして「白い花(お蚕様の足の数にちなんだ十六花など)」を作って神棚に供えました。
- Q小正月の火祭り「どんど焼き」は今でも見られますか?
- A
現在も各地域の神社や河原(秩父の道陸神焼きなど)で実施されていますが、都市部では煙や火災リスク、空き地の減少などの理由で縮小・廃止が相次いでいます。この火で焼いた餅や団子を食べると「その年は風邪をひかない」と言われています。
- Q埼玉県ならではの定番の「正月遊び」はありますか?
- A
インドア遊びの圧倒的定番は「彩の国21世紀郷土かるた」です。県内の小学生の多くが親しみ、埼玉の地名や名産、渋沢栄一などの偉人を遊びながら学びます。また、春日部周辺では「凧を高く揚げるとお蚕様の値段が上がる」という養蚕占いがルーツの凧揚げ文化があります。
まとめ
埼玉県の正月文化は、江戸・関東の文化と、農業・養蚕・川魚・伝統工芸など地域の暮らしが融合して形成されてきた文化といえます。
平野部では、焼いた角餅を使った関東風のすまし雑煮や、立身出世を願う「くわいの含め煮」、岩槻・鴻巣・春日部などの人形産地と結びついた羽子板・破魔弓などが特徴です。東部の水郷地域では、ナマズやコイなどの川魚を正月のご馳走とする独自の食文化も育まれてきました。
一方、秩父・比企などでは、かつて盛んだった養蚕業との結びつきが強く、繭玉飾り、削り花、十六花、小正月の火祭りなど、豊作や繭の収穫を願う予祝文化が受け継がれています。「小正月」を重視する風習は、埼玉の正月文化を特徴づける重要な要素の一つです。
その一方で、養蚕業の衰退や都市化、生活様式の変化によって、若水汲みや自家製の正月料理、地域単位のどんど焼きなど、姿を消しつつある風習もあります。
埼玉県の正月文化は、単に「東京に近い関東の正月」ではありません。江戸文化、農村文化、養蚕文化、水郷文化、職人文化が重なり合い、それぞれの地域の暮らしの中で形を変えながら受け継がれてきた文化です。
現在も行われている正月行事を訪ねたり、地域に残る料理や飾りを実際に体験したりすることは、埼玉の歴史や人々の暮らしを知るきっかけにもなります。身近な地域のお正月を見つめ直すことが、失われつつある伝統文化を次世代へ伝えていく第一歩になるでしょう。
参考文献・資料
- https://www.thermos.jp
- https://suga-ningyouten.jp
- https://studyinjpn.com
- https://www.maff.go.jp
- https://karuta.zouni.jp
- https://chefgohan.gnavi.co.jp
- https://symbiio.co.jp
- https://domani.shogakukan.co.jp
- https://www.pref.saitama.lg.jp
- https://suga-ningyouten.jp
- https://www.city.koshigaya.saitama.jp
- https://www.saitama-np.co.jp
- https://inahoyama.com
- https://x.com
- https://www.youtube.com
- https://www.ja-chichibu.jp
- https://www.kumagayakan.net
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