【コラム】監修こぼれ話「兵庫県ではお正月に冷たい八宝菜を食べる風習がある!?」の真実

ホットペッパー1月号表紙
ホットペッパー1月号表紙

日本正月協会では、代表者の総理事長 今成優太を筆頭とし、2020年12月25日発行のフリーペーパー「ホットペッパー(リクルート社)」様の記事を監修させていただきました。お正月の魅力を日本の皆様に伝える、素晴らしい記事となっておりますので、ぜひ皆様にもお手にとっていただければ幸いです。

さて、こちらのコラムでは、監修こぼれ話といたしまして、ホットペッパー読者の方々からの関心が高かったにも関わらず、ボツになった幻の企画「兵庫県では、お正月に冷たい八宝菜を食べる風習がある!?」についてお話させていただきます。

なお、監修等のご依頼のあるメディアの方におかれましては、こちらのメディア対応ルールをご一読いただき、お問合せください。

八宝菜って、日本料理……?

ホットペッパー様よりお話をいただいた時、「兵庫県ではお正月に冷たい八宝菜を食べる、という風習は知っていますか?」というお話がありました。
何か興味深い話でしたので、調べてみることにしました。

その時、不思議に感じたのは、「八宝菜」という料理が、風習として残っているということでした。
他の地域で「八宝菜」がお正月料理として食べられているという話は聞いたことがありませんでしたから、なぜ兵庫県でそのような風習があるのか、とても興味深かったのです。

まずはネットで軽く検索してみました。すると、「お正月にはかまどの神様を驚かせないように八宝菜をたくさん作っておいて、お正月に少し温め直して食べる」と、「かまどの神様」という、他の地域のお正月にはあまり聞いたことがない神様が出てきました。

年神様はもちろんよく聞かれます。そのほか、トイレの神様と呼ばれるセッチンベーナさんとかは、お正月の風習でよく登場します。しかし、かまどの神様はあまり聞きません。

ですが、八百万(ヤオヨロズ)の神々というように、昔ながらの日本の風習では、様々な場所に神様がいると信じられているので、そのような神様がいてもおかしくはありません。

このような風習が育った背景はなんなのか、ますます興味がわきました。
しかし、このような風習が書かれているのはネットだけで、書籍ではこの情報は見つかりません。ネットだけでしか確認できない情報は、デマの可能性があるので、もう少し詳しく調べる必要があると考えました。

ウソかマコトか?証拠調査の開始

さらに詳しく調べてみると、兵庫ではお正月料理として「腸詰め(ウインナー)」があることや、「冷たい八宝菜を食べるのは、兵庫に移住してきた台湾人や中国人」ということもわかりました。

よくよく考えてみると、腸詰めや八宝菜は、日本料理ではありません。

そもそも古来からの日本料理には「炒める」という調理方法は存在しません。なぜなら、炒めるのに十分な火力が、古来の日本にはありませんでした。だから、煮る、炊く、焼くなどの調理方法は、日本では発達してこなかったのです。
いろりを想像してみてください。いろりでおかゆは作れても、八宝菜はできそうにないでしょう?

ですから、八宝菜のような、炒める料理は、昔ながらの日本の風習として考えるには違和感があります。
そして、腸詰め。腸詰めは、明らかに日本料理ではありません。なぜ、このように、明らかに日本料理でないものばかりが、兵庫の風習として聞かれるのでしょうか?

横浜、長崎、神戸。国際貿易拠点には、「外国人街」がある。

ここで改めて「兵庫」という地域のことを思い出してみましょう。
私はこれまでに、道の駅から道の駅へと車中泊で渡りながら、沖縄を除く日本の46都道府県を自家用車で訪問した経験があります。
兵庫県でお気に入りの場所といえば、宝塚大劇場のある宝塚市。街並みからして異国情緒ただよう素敵な空間で、劇場に入る前から別の国にトリップした感覚になります。そして、劇場からでたあとも、街並みの異国情緒が漂い続け、余韻を感じ続けられる素敵な都市です。

「異国情緒」

そう、兵庫県には異国情緒があるのです。なぜでしょうか?
そう、兵庫県には港があり、古くから国際的な貿易拠点でした。外国人の往来がたくさんあります。それを思い出して、ようやく疑問解決の糸口が見えてきました。

「兵庫県ではお正月に冷たい八宝菜を食べる」これは「兵庫県の風習」ではなく、「兵庫県でおこなわれている、外国の風習なのではないか?」と。

そこで、兵庫県のお正月仲間に連絡をとり、これまでの経緯を説明してみると、「神戸の中華街の話ではないか?」という言葉が返ってきました。

私は、兵庫県に中華街があるというのは、その時まで知りませんでした。神戸というのは、横浜や長崎のように「外国人街」がある文化交流都市でもあったのです。

つまり、「兵庫県ではお正月に冷たい八宝菜を食べる」これは「兵庫県の風習」ではなく、「兵庫県の外国人街でおこなわれている、外国の風習なのではないか?」と。「日本の風習として定着しているものでなく、外国人街で、外国人だけがやっているものではないか?」と、ほぼ確信に近いものをその時感じました。

日本の文化も実は発祥は外国のものがほとんど。日本文化かそうでないかは「普及度」で決まる。

しかし、「兵庫県にそれが風習として定着しているかどうか?」を判断するには、現在の情報だけでは不十分でした。たとえはじめは、日本に来た外国人だけがやっているに過ぎない文化でも、日本に広く普及し、浸透していたら、それはもう「日本の文化」と言えるだろうと私は考えます。

お雛様や七夕などの「五節句」の文化も、中国由来の文化と日本古来の文化が融合して、今では立派な日本文化になっています。多くの日本文化も、発祥をたどると中国由来のものがほとんどです。お正月だって、日本人がはじめた文化ではありません。

そういう意味では、(異論を唱える方もいらっしゃるでしょうが、)クリスマスも、ハロウィンも、すでに立派な「日本の文化」になりつつあると、私は考えています。

すなわち、「日本の文化かどうか?」というのを決めるのは、「発祥が日本であったかそうでないか?」で決まるものではなく、「普及度」で決まると私は考えます。

つまり、「兵庫県ではお正月に冷たい八宝菜を食べる」というのが、兵庫県の風習かどうかを決めるのは、「発祥が兵庫県かそうでないか」ではなく、「現在の兵庫県内での普及度」で決まるもの。兵庫県内の多くの方に、長きにわたって実践されていれば、普及していると言えるので、それは兵庫の風習であるし、そうでないとすれば兵庫の風習とは認められません。

普及度のバロメーターとしての「おせちカタログ」

そこでわたしは、普及度を確認する方法として、「ローカルスーパーの提供するおせち料理のカタログ」を一つの目安とすることにしました。地域に密着しているローカルスーパーは、その地域のニーズに即した商品提供をしています。ですので、兵庫のローカルスーパーが提供するおせち料理の中に、八宝菜が入っているとすれば、それは「兵庫の風習としてすでに定着している」と言えるでしょうし、入っていなければ「兵庫の風習として定着しているとは言えず、外国人街の中で外国人だけがおこなっている外国の風習である」と言えるのではないかと、私は考えました。

そこで、兵庫のお正月仲間に連絡をとり、おせち料理のカタログの写真をLINEで送ってもらいました。実はそのお正月仲間は、兵庫のローカルスーパーの店員をしていたのです。

そのカタログのおせちの中に、八宝菜は入っていませんでした。
確定です。

デマとまでは言えないまでも、誤解を招く「兵庫県ではお正月に冷たい八宝菜を食べる風習がある」という情報の真相

ネットで少し調べると、「兵庫県ではお正月に冷たい八宝菜を食べる風習がある」という記事を見つけることができます。しかし、これは、肝心の「外国人がやっている外国の風習」という説明が抜けてしまっています。完全なデマとは言えないまでも、誤解を招く表現になっていると、私は感じます。

このお話をホットペッパーさんにしたところ、「兵庫県では、お正月に冷たい八宝菜を食べる風習がある!?」の企画はなくなってしまいました。読者様からのアンケートで関心が高かった企画だそうなので、とても残念がられていましたし、私も残念でした。

ですので、今回の監修のこぼれ話として、日本正月協会のホームページで、「誤解を招く情報が広まっている」ということをお伝えしたかったのです。

現在の日本には、お正月に八宝菜を食べる文化は根付いていないが、そういう文化がこれから広まったとしても間違いではない。

お正月に、冷たい八宝菜を食べたい、という方は、日本人の中にもいらっしゃることと思います。

私は、この記事で、皆さまが、お正月に冷たい八宝菜を食べることに意義を唱えたいのではありません。「それはまだ日本文化としては定着していない、大陸の文化です」ということをお伝えしたいだけなのです。

2021年のお正月は、新型コロナ禍の中で迎える最初のお正月です。
様々なライフスタイルがあっていいと思いますし、ここからはじまる新しい文化が芽生えるタイミングになるかもしれません。
ホットペッパーさん掲載の記事、そしてこのコラムを、皆さまならではの、新しいお正月ライフスタイルを迎える一助としていただければ幸いです。

日本正月協会 総理事長 今成優太

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